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連合会では、政策アセットミックスを最も重要な投資政策と位置づけ、政策アセットミックスを中心に年金資産の運用とリスク管理を行なっています。
政策アセットミックスは、長期的な観点から策定しており、不確かな短期的な市場見通しに基づいて変更することはありません。しかし、一方で市場の変動に伴い年金資産が増減することで、年金債務との関係(年金債務に対する年金資産の割合である「積立水準」)が変化します。あるいは、将来の年金債務の状況が当初の想定と異なるものとなったり、市場環境が長期的、構造的に変化する場合も想定されます。このように、政策アセットミックスを策定した当初に想定した諸条件が、時間の経過とともに変化することがありますので、そのような場合は、その時点における最善の想定に基づき政策アセットミックスを検証し、必要に応じて変更を行います。様々な変化の影響を反映し、現在の政策アセットミックスが、運用の目的、目標を達成するうえで最適なポートフォリオであるか定期的に検証、確認を行います。
連合会が管理運用する年金資産は、年金債務の特性に応じて、基本年金等にかかる資産を運用するポートフォリオと、通算企業年金にかかる資産を運用するポートフォリオの2つに分けることができ、それぞれの年金債務に適合した政策アセットミックスを策定しています。
基本年金等にかかる年金資産は、平成26年3月までに厚生年金基金から移転申出された基本年金と厚生年金基金の解散により徴収した代行年金、及び平成17年9月までに移換された脱退一時金相当額(中脱)や残余財産分配金(解散、終了)に基づく年金給付等にかかる資産で、基本年金と代行年金には国に代わって厚生年金の一部を支給するための原資(代行部分)が含まれています。
代行部分の債務は厚生年金本体の利回りで評価することになっており、厚生年金本体の資産は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用しています。GPIFでは、資産の多くの部分を市場運用しており、GPIFと同様の運用を行えば、同じような運用結果を得ることができます。そうなれば代行部分での年金財政上の過不足は生じません。このように、代行部分の債務はヘッジする(リスクを打ち消す)ことができます。
一方、加算部分(基本年金等にかかる年金資産から代行部分を除いた企業年金独自の上乗せ部分)は予定利率に基づき毎年度年金債務が増加していきますので、予定利率(4%台)を上回るリターンが必要になります。代行部分と加算部分の債務の割合は、キャッシュフローの変化や市場の変動により一定ではありませんが、概ね3:1の割合となっています。基本年金等の資産にかかる政策アセットミックスは、約4分の3の資産についてGPIFの運用を考慮しながら代行部分の債務ヘッジを意識しつつ、残り4分の1の資産について4%台の利回りを資産全体で如何に安定的に獲得するかという観点で策定されます。
加算部分の予定利率は4%台ですが、年金債務に占める割合は約4分の1に過ぎないので、資産全体に置き換えれば概ね1%程度となります。代行部分はGPIFと同様のポートフォリオでヘッジできますので、GPIFポートフォリオに対し許容できるリスクの範囲内でリスク資産の組入れを増やしプラス1%強のリターンを目指すことになります。このリスク資産の増加の程度は、積立水準のレベルによって異なります。積立余剰になれば年金債務を資産額が上回った分、資産全体に置き換えた加算部分の必要利回りは低下するので、リスク資産の割合を減らすことができます。
このように基本年金等では、ポートフォリオの約4分の3を占める代行部分をヘッジできるという特性から、資産全体に置き換えた加算部分の必要利回りが積立水準の変動によって変化し、それに伴いリスク資産の配分を調整していくことができます。したがって、基本年金等ではリスク管理の観点から各積立水準に応じて、それぞれに適したリスク量となるよう政策アセットミックスを定めており、積立水準の変化に応じて資産配分を変える動的な管理を行っています。基本年金等では、積立水準の改善に伴いリスクを低下させることで将来の積立不足になる確率を小さくすることができます。これにより年金財政を安定化させることができます。
通算企業年金にかかる年金資産は、平成17年10月以降に移換された脱退一時金相当額(中脱)や残余財産分配金(解散、終了)に基づく年金給付等にかかる資産で、代行部分のない加算部分だけからなる年金債務です。予定利率は2%台で、これを上回る期待リターンのポートフォリオで運用を行うことになります。2%台の期待リターンを最も低いリスクで達成できるポートフォリオを政策アセットミックスとしています。
通算企業年金には代行部分がないため、基本年金等のように、年金債務の一部をヘッジしたり、資産全体に置き換えた加算部分の必要利回りが変化したりすることがありません。資産全体で予定利率を上回る運用を行うことになりますが、予定利率の水準が基本年金等より低いので、そもそもリスクの高いポートフォリオにはなりません(リスク資産(株式)の割合が、基本年金等では40%~50%であるのに対し、通算企業年金では20%です。)。
通算企業年金では、積立水準の変動に伴う動的管理によるリスク調整の効果は、基本年金等と比べかなり限定的となるため動的管理を行わず、政策アセットミックスを出来るだけ維持しながら、リスク量を一定に保つようポートフォリオを管理することで、健全な財政を目指します。
政策アセットミックスを策定するために、まず定量的な分析を行ないます。連合会が使用している定量モデルは、ダウンサイドリスク・モデルです。ダウンサイドリスクとは、ある基準を下回るリスクのことで、連合会では積立水準100%を下回るリスクと、加算部分のポートフォリオのリターンが目標リターン(予定利率)を下回るリスクをダウンサイドリスクと定義し、そのダウンサイドリスクが最も小さくなるようなポートフォリオ(資産配分)をダウンサイドリスク・モデルで導き出しています。
また、候補となるポートフォリオについて、ALM分析を行い、統計的に想定可能な多数の将来資産額と年金債務の推計を行い積立状況の分布の推移を確認します。
これらの定量分析では、各資産の期待リターンと過去の分布を使った多数のリターンに基づき将来シミュレーションを行います。
国内債券 | 外国債券 | 国内株式 | 外国株式 グローバル株式 |
---|---|---|---|
1.5% | 3.0% | 5.0% | 7.0% |
ダウンサイドリスク・モデル及びALM分析などの定量分析に用いる各資産のリターン・データは、1985年度からの月次の市場リターンを使い、各資産の平均リターンが期待リターンとなるよう調整したうえで、連続する24か月を1ブロックとして5ブロック(10年分)、ランダムに1万通り発生させています(移動ブロック・ブートストラップ法)。
定量分析の結果は、そのモデルに入力したデータなどが正確であるという前提の基で正しい答えとなりますが、実際に入力したデータが完全に正確であるという保証はありません。したがって、モデルの結果をそのまま使うのではなく、定性的な判断を加え、最終的な政策アセットミックスを決定します。
連合会が管理する年金資産は、10兆円を超える巨額の資産です。定性判断においては、特にこの資産規模にも配慮します。資産規模が大きいということは、規模の経済が働き有利な面もたくさんありますが、資産の売買では、自らの取引で価格を不利な方向に動かしてしまうリスク(マーケット・インパクト)をはらんでいます。積立水準に応じて資産配分を変更する政策においては、このマーケットインパクトに対し慎重に対応しなければなりません。そこで、モデルの結果を踏まえつつ、できるだけマーケットインパクトが発生しないよう定性的な判断で修正を加えています。
積立水準に応じた政策アセットミックスを最終決定する前に、市場が大きく混乱したときにどの程度積立水準が悪化してしまうのか、どの程度までの市場暴落が起きても耐えられるのか、などの確認を行います。これをストレス・テストといいます。
ストレス・テストでは、過去に起こった大きな混乱状況や、過去に起こったことも無いような大きな混乱時にどこまで積立水準が悪化してしまうのかをシミュレーションし、ダウンサイドリスクに対する耐久性をチェックしています。
連合会では、積立水準に応じた政策アセットミックスの政策を実効性あるものとするため、毎日、前日の積立水準と資産構成割合を把握し、必要に応じ資産配分の調整を行ないます。これをリバランスと言います。実際のポートフォリオは市場の変動とともに資産構成割合が変化してしまうので、これを一定の範囲内で調整していくのがリバランスです。
連合会の資金規模では、わずかな比率調整でもかなりの額の売買となり、1日でリバランスを執行することは困難です。マーケット・インパクトを避けながらスムーズにリバランスを行なうためには、タイムリーかつ迅速に状況を把握し、必要に応じて早めに実行に移す必要があります。そのために、毎日状況把握を行い、必要なリバランスは内部のインハウス運用を最大限に活用し柔軟かつ機動的に行ないます。
連合会では、1996年4月から、自らの責任と判断で、リスク許容度に応じた政策アセットミックスを策定し、リバランス、検証、見直しを行ってきました。それまでは、資産構成割合に関する規制があり(安全性資産50%以上、株式30%以下、外貨建資産30%以下、不動産20%以下)、自らの資産構成割合を決定できる余地は限られていました。
積立水準 | 国内 株式 | 外国 株式 | 国内 債券 | 外国 債券 | その他 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1996年 4月23日から |
- | 30% | 14% | 38% | 6% | 12% |
1999年 10月1日から |
- | 33% | 18% | 42% | 7% | |
2002年 9月1日から |
- | 33% | 23% | 37% | 7% | |
2007年 12月18日から |
100%から110% 110%から120% |
23% 20% |
22% 20% |
35% 40% |
20% 20% |
|
2008年 12月3日から |
110%未満 110%から120% |
16% 13% |
24% 22% |
40% 43% |
20% 22% |
|
2010年 8月1日から |
100%未満 100%以上から105%未満 105%以上から110%未満 110%以上から115%未満115%以上 |
40% 35% 30% 25% 20% |
60% 65% 70% 75% 80% |
|||
2013年 7月23日から (2014年11月25日まで) |
100%未満 100%以上から105%未満 105%以上から110%未満 110%以上から115%未満115%以上 |
43% 38% 33% 25% 20% |
57% 62% 67% 75% 80% |