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基金では、運用目標を達成するためにリスク許容度に応じて政策アセット・ミクスを策定します。ある分析では、リターンの変動の9割以上は政策アセット・ミクスによって決まるといわれていますので、その重要性は非常に高いと同時に、その維持管理(リバランス)が中長期の目標達成の鍵になります。リバランスは、政策アセット・ミクスを策定した際のリスク許容度を上回るリスク、下回るリスクの両方を回避するためのリスク管理といえます。
政策アセット・ミクスを策定したとしても、資産の時価は絶えず変動していますので、実際の資産構成は、政策アセット・ミクスと乖離することになります。この乖離を解消し、政策アセット・ミクスに回復させる行為をリバランスと言います。リバランスによって企業年金のリスク許容度を上回るリスク、あるいは下回るリスクのいずれをも回避することができます。
しかしながら、政策アセット・ミクス維持のために常にリバランスを行うとなると、かえってリバランスのための取引コストがかかり過ぎてしまいますので、効率的な方法とは言えません。このため、企業年金が許容乖離幅(例:各資産の配分比率±〇%)を予め設定するのが一般的です。また、リバランスを行うタイミングについても、定期的に(例えば3ヶ月に一度)行うのか、あるいは資産構成比率の変動が許容乖離幅以上になったときに行うのかというように、一定のルールを決めておくとよいでしょう。
基金は、運用の基本方針を作成し、基本方針に沿って運用しなければなりません。また、運用受託機関に対し運用ガイドライン(運用指針)を作成し、これを交付しなければなりません。「運用の基本方針」は、資産運用の目的、資産構成に関する事項など基金の資産運用に関する基本的な事項について、基金関係者の間でその考え方を統一するために文書化されたものです。一方、「運用ガイドライン」は、運用受託機関に対して、運用にあたって個別に遵守すべき内容を示すものです。
言い換えれば、基金の資産運用のプロセスを計画(PLAN)-運用(DO)-評価(SEE)のサイクルに分解したときに、「運用の基本方針」はPLANの段階に位置するものであり、基金の資産構成に関する事項、運用受託機関の業務に関する報告の内容及び方法に関する事項など、基金が主体的に運用を行っていくために基金の資産運用の全体的な枠組みに関する方針を定めたものです。「運用ガイドライン」はPLANからDOの段階に移行するにあたって、「基本方針」に基づき個々の運用受託機関に役割を割り振り、その役割に応じ遵守すべき事項等を示したものであり、契約内容の一部を構成するものです。
基本方針に記載する事項は、(1)年金給付等積立金の運用の目標に関する事項、(2)運用に係る資産の構成に関する事項、(3)運用受託機関の選任に関する事項、(4)運用受託機関の業務に関する報告の内容及び方法、(5)運用受託機関の評価に関する事項、(6)運用業務に関し遵守すべき事項(7)その他、運用業務に関し必要な事項または記載することが望ましい事項(リスク管理に関する事項等)とされています。
また、運用ガイドラインにより運用受託機関に示す事項として、(1)運用に係る資産の構成に関する事項、(2)運用手法に関する事項、(3)運用受託機関の業務に関する報告の内容及び方法に関する事項、(4)運用受託機関の評価に関する事項、(5)運用業務に関し遵守すべき事項、(6)その他、運用業務に関し必要な事項とされています。
運用評価は、定性的評価と定量的評価の総合評価によって行うのが一般的であり、定量的評価より定性的評価が重視されます。
運用評価のポイントは、よく「5つのP」として表現されます。(1)Philosophy:投資哲学(考え方、投資の一貫性)、(2)People:人材(運用能力、適正な人材、人材育成)、(3)Process: 運用プロセス(投資決定プロセス)、(4)Portfolio :ポートフォリオの構成(運用スタイル、リスク管理、投資の一貫性)、(5)Performance :運用成果、とそれぞれ英単語のP で始まることから、このように表現されます。
定量的評価は、5つ目のP であり、具体的には市場平均と比較するベンチマーク比較(相対基準)と運用手法やスタイルの類似したポートフォリオを比較するユニバース比較(類似基準)があります。どちらも定量化でき比較的わかりやすく客観性がありますが、過去のパフォーマンス、特に短期のパフォーマンスには、統計学上の標本誤差の問題から運・不運がまぎれこみ、真の運用能力を評価することが困難な場合があるというデメリットがあります。
定性的評価は、5つのP のうち(1)から(4)に該当する項目で、各基金の独自の判断による主観的な評価であり、客観的・定量的に表すことが難しいといわれています。
残念ながら機械的に誰の目にもはっきり判断できる決定的な評価方法は存在しません。
そのため、定量的な過去のパフォーマンスにとらわれるのではなく、その結果が将来に結びつくのかどうか運用に対する考え方や体制などの定性的な評価により、その信頼性を総合的に判断していく必要があります。
なお、前述のとおり、定量的評価には、大別してベンチマーク比較とユニバース比較の2つの方法があります。
ベンチマーク比較は、運用成績の市場収益率に対する優劣やその要因を判断する評価方法であり、資産ごとに行うこともできますし、資産構成比に応じてベンチマークを組合わせた複合ベンチマークにより、ファンド全体の収益率を評価することもできます。
また、ユニバース比較は、類似の特性を持つ複数のファンドのデータを集めたもの(ユニバース)と運用成績を対比させ、自分のファンドの収益率が、全体のなかでどのあたりに位置しているかを判断する相対比較評価方法ですが、ユニバースがどの程度比較対照として同じような特徴を持っているか等について十分に留意する必要があります。
運用受託機関の評価を実施する際は、運用成果が目に見える定量評価が分かりやすく、基金関係者の納得を得やすいことは確かです。但し、運用実績は必ずしも「将来の運用」を予測するものではないため、定性評価を加味して総合的な評価を実施することが重要となります。
定性評価の項目は各基金が実状に応じて決定していきますが、一般的には以下のようなものがあげられます。
定性評価項目は、運用受託機関の運用報告の場をとおして確認していくことができます。このことは基金と運用受託機関のコミュニケーションを深める一助にもなります。
なお、定量評価も含めた運用評価の期間をどの程度とするかについては、一般的には少なくとも3年間は必要と思われます。ただし、「基金の信頼を裏切るような決定的な事実が判明」した場合には、この限りではありません。
運用コンサルティング会社を採用している基金では、定量・定性両面の助言が得られると思いますが、定性面については重複したとしても、前述のように運用受託機関とのコミュニケーションを深める意味からも基金も直接チェックすることをおすすめします。定性評価は「その運用受託機関が信頼に値するかを見定める作業」と言い換えることができますので、委託者自らがそれにあたることは重要です。
定性評価の難しさは、項目は設定できても実際の「評価」で定量評価と比べて機械的に一目瞭然とはいかないこと、一貫性を保てるかどうかです。
確かにこの点は永遠の課題ではありますが、評価する際にできる限り複数の人間の目を通すようにしたり、項目ごとに点数制・可否等の簡易な基準を設けたりすると同時に、選定のプロセスも含め記録に残すことにより、透明性や一貫性を持たせる工夫が考えられます。
運用受託機関の採用や解約、掛金の払込み割合及び給付費の負担割合を変更する場合の手続きに違いがあります。
具体的には、契約している運用受託機関の名称や掛金の払込割合等を基金規約に規定している場合には、これらの事項の変更は規約事項の変更となるため、代議員会による議決を行うとともに、行政に対して規約変更の届出が必要となります。
一方、基金規約において、運用管理規程に規定する事項、運用管理規程の策定及び変更手続きを定めた上で、運用受託機関の名称や掛金の払込割合等を運用管理規程に規定した場合には、規約事項の変更にはあたらなくなるため、規約変更の届出をする必要がありません。
このように、運用管理規程の策定及び変更手続きを基金の規約上明確にすることにより、運用管理規程を変更する場合においては、代議員会での議決を不要とし、理事会の議決を得て行うものとする旨定めることもできますし、あるいは、代議員会の開催が困難な場合には、理事会での議決を得て行うものとする旨を定め、状況に応じて柔軟な対応をとることも可能です。
なお、基金規約に規定した運用受託機関の名称や掛金の払込割合等を運用管理規程に規定することに伴って、基金規約の変更が必要な場合には、運用管理規程を添付のうえ、行政に対して認可申請を行う必要があります。
基金の資産運用委員会は、基本方針や政策的資産構成割合の策定及び改定等、重要事項について、理事長等へ意見を述べたり助言したりするためにその設置が望ましいといわれています。法的には、平成9年4月2日年発第2548号「厚生年金基金の資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドラインについて(通知)」中の「6 資産運用委員会」において「理事長等を補佐するために資産運用委員会を設置するのが望ましい」と規定されています。
資産運用委員会の役割としては、前述のとおり、運用の基本方針や政策的資産構成の策定及び見直し、運用受託機関の評価等に関し、理事長等へ意見を述べる事等が考えられますが、その場合、もっぱら加入員等の利益を考慮し、これを犠牲にして、加入員等以外の利益に配慮すべきではありません。また、委員の構成については、基金の実状に応じて、基金の理事、代議員、事業主の財務に関する業務を担当する役員等の中から理事長が選任します。この時、外部から委員を選出する事も可能ですが、資産運用委員会が運用受託機関等の評価を行う場合、運用受託機関等の関係者の委員が審議に加わることは、適当ではありません。
なお、前述のとおり、資産運用委員会の開催及び基金での位置づけは、各基金の実状に応じて定められますが、基金の業務執行に関する意思決定はあくまで理事会で行うべきものであることに留意することが必要です。
【資産運用委員会設置規程(例)を添付してありますのでご参考にしてください。】
?○○厚生年金基金資産運用委員会設置規程(例)?
(目的)
(組織)
(委員・特別委員及び専門委員)
(任期)
(委員長)
(会議)
(審議事項)
(特別委員)
(庶務)
(雑則)
アクティブ運用とは、運用機関が絶えず情報を追いかけ積極的にリスク(銘柄選択、セクター配分、金利変動のリスク等)をとることにより、市場の収益率を上回るリターンを追求する運用のことをいいます。そのため、運用機関ではより多くのプラスα を求めるために得た情報に基づき頻繁に運用資産の売買を行っています。ある期間内に運用資産が売買によってどの程度入れ替わったのかを示す指標として、「売買回転率」という指標があります。さまざまな計算方法がありますが、代表的なものとして、(売却金額と購入金額の少ないほうの金額)÷資産の時価平均残高で求める方法があります。
「売買回転率」は、ファンドの運用方針やパフォーマンスとの関係によって、その数値が適切かどうか判断するものであり、ある決まった適正な数値があるものではありません。
評価の例としては、例えば、国内株式アクティブ型ファンドがあり、このタイプのファンドは、インデックス+αを狙うために適度に銘柄の入れ替えを行います。
ファンドA | ファンドB | |
---|---|---|
超過リターン | 2.00% | 4.00% |
売買回転率 | 60.00% | 60.00% |
ファンドC | ファンドD | |
---|---|---|
超過リターン | 3.00% | 3.00% |
売買回転率 | 30.00% | 60.00% |
表中のファンドAとファンドBを比較すると、同じ売買回転率ですが、ファンドBの方が超過リターンが高いので、コストの面からファンドBの方が効率的であると考えられます、また、ファンドCとファンドDを比較すると、どちらも同じ超過リターンを得ていますが、ファンドCの方が効率的であるという見方もできます。
ただ、この評価を行う場合、気をつけなければならないのは、「資産規模が同等である」「同じ運用スタイル(バリューとバリュー等)をとっている」など、似ているもの同士の比較評価でなければ間違った判断をすることになります。
また、TOPIXに連動するようなパッシブ型ファンド(インデックス・ファンド)の場合は、できるだけ売買コストを抑えてベンチマークに連動することを目的とした運用を行います。そのため、アクティブ型ファンドなみの売買回転率であれば、コスト面から非効率であると考えられます。さらに、もしそのファンドのベンチマークへの連動の程度が良好でない場合には、かなり無駄なコストを負担しているといわざるをえません。
【コンサルティング会社活用の位置づけ】
まず、何のためにコンサルティング会社を活用するのかを明確にすることが大切です。基金ではコンサルタントから得た情報を参考に資産配分や運用受託機関の選定の意思決定を行うことになりますが、その情報の内容や導出された背景がわからなければ、それをどう解釈して、どう意思決定に結び付けてよいのかわからないことになります。コンサルタントにすべてを任せきりにすると、基金固有の特性が十分に反映されない結果になる可能性がありますし、コンサルティングの内容は個々の基金ごとで異なるはずですので、コンサルタントとの情報交換を心掛けることが必要です。
また、基金の資産運用においては、基金自らが最終的な意思決定を行う必要があることから、コンサルタントからの情報は「意思決定に必要な知識を補完する」、「意思決定を行うための情報を得る」といった位置づけで活用することが大切です。
【コンサルティングの内容】
コンサルタントが提供するサービスにはさまざまなものがありますが、資産運用プロセスに沿って考えると一般的には次のように整理できます。
段階 | コンサルティング内容 |
---|---|
PLAN | 政策アセット・ミクスの策定(年金ALM) |
DO | 運用機関の選定、運用ガイドラインの提示 |
SEE | 運用結果の評価、運用方針の検証 |
表中の各項目もさらに詳細に分けると、たとえば、「政策アセット・ミクスの策定」では、「基金が許容するレベルにあった資産の組合せは何か」、「政策アセット・ミクスを策定(あるいは改定)することの効果はどれくらい期待できるのか」などといった項目があります。「運用機関の選択」においては、「どういう基準で運用機関を選択すべきか」、「基金のニーズにあった運用機関はどこなのか」といった項目、「運用結果の評価」では、「定量的分析、定性的分析をどう解釈して評価を下すべきか」、「どういう基準で運用機関のシェア変更を行うべきか」などといった項目があります。また、運用機関からの運用報告に関するミーティングにおいて「どういった点に着目してミーティングに臨むべきか」、「どういった質問をすればよいか」などを助言するサービスもあります。
この他にも、基金に対して定期的に資産運用に関する勉強会を開催し、知識のレベルアップを図るといったコンサルティング・サービスもあります。コンサルタントが提供するサービスは、さまざまなサービスがありますので、どのサービスを受けたいのか基金側で明確にしておかなければなりません。
【コンサルティング会社を利用するにあたっての留意点】
実際にコンサルティングを利用するにあたっては、次のような点に留意する必要があります。